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人物

 國貞俊臣さん

 國貞俊臣さんは1982年7月13日神戸市で生まれた。男ばかりの三人兄弟の長男だ。高校は工業高校で電子科に入ったが理想と違いやる気をなくしたという。しかしとりあえず大学に行くために一気に勉強を始めた。そこでアメリカから赴任していたアメリカ人の教師にアメリカ留学の提案をされた。外語大を目指していたが国立で金も安いので、あっさりアメリカの短期大学に入学することになった。

 國貞さんは大学では真面目に勉強もしないでバンドに夢中になって留年ばかりしていた。英語の個別指導を受けることになり、そこで日本語も堪能なアメリカ人の女性と出会った。それがジェナさんだった。付き合って二年、國貞さんは日本に帰って仕事をしようと思った。一緒に日本に行こうといい、二人は結婚した。彼は24歳、ジェナさんは26歳だった。しかし日本は彼女が思った土地とは違ったらしい。スウェーデンの鉄鋼会社に内定したのを辞めて、二人でアメリカに戻ることになった。そのときに帰国までの二ヶ月の短期で入った神戸の仕事で、同じく短期で関わった千光士と偶然出会った。國貞さんはアメリカで四年制の大学に編入した後、シカゴでシステムエンジニアの仕事に就いた。その後奥さんの実家のフィラデルフィアで別のシステムエンジニアの仕事に就き、日本の取引先とのやりとりで日米を行き来している。しかし最近また転職して仕事先のニューヨークに転居した。アメリカではキャリアアップの転職は日常茶飯事のようだ。

 國貞さんは学校も宿題も押さえつける先生も嫌いだった。アメリカの先生は自分で考えろと指導する。日本からアメリカに来る人は好奇心で動くが、他の国から来た人は目的意識があると言う。それでもアメリカは思ったよりも保守的で視野の狭い人が多いそうだ。アメリカに行くにはエリートかヒッピーだと言う。自分のやりたいことをやってて文句を言わないし、やっていないと文句を言われる。ブルーカラーからエリートまで自分の意志がある。

 私は彼と出会ったとき瞬間で話が合った。彼の印象は無国籍でやはりどことなく異国の匂いを漂わせていた。静かに語りかけるように自分のリズムを崩さずに彼は話す。そうかと思えばまだ少年のような初々しさも兼ね備えている。出会って一ヶ月ですぐにアメリカに帰り普通はそのまま疎遠になるもんだが、帰国するたびに千光士の家に立ち寄って頂いき、夫婦共々まさかこんなに縁が続くとは思わなかった。二人が我が家に来るといつもすがすがしい風を持って来てくれる。女性との結婚で違う土地に住む。それは自分が妻と一緒になって関西に住んだのと同じような気がしていた。僕は彼が異国に定着するかどうかの揺れを何度も感じていた。だから自分なりに彼らを応援したい、そんな気持ちから作品を作りたいと思った。そして彼の絵は一瞬で描けた。



 

ジェナ、フィリッチズさん

 ジェナ、フリッチズさんは1979年6月13日ペンシルバニアで生まれた。妹がいて二人姉妹、お父さんはヒッピーだった。14歳のときにお母さんが自分と妹を連れて突然失踪離婚した。それでもジェナさんはお父さんがかわいそうだと家に戻った。それからは自由に生きて来た。学業はアレンタウンの大学に入って日本語を勉強した。三ヶ月ほど新宿に住んだ時期もあったそうだ。大学を卒業してノーサンプトン大学のチューター※についた。英語のクラスで異国の人たちばかりいたが、國定さんとはそこで出会った。彼とは知り合って一年くらいで付き合い始め、二年後に結婚した。

 日本に暮らすつもりで彼とやって来たが、住んでみると思った国ではなかったそうだ。すべて京都みたいなとこばかりだと思っていたらしい。それでも日本語は好きだった。それはパズルみたいなおもしろさだったと言う。もうひとつ憶えたのは食べることのおもしろさだった。アメリカでは食事は面倒で楽しみではなかったからだ。
 今は同じノーサンプトン大学でフルタイムで働けるようになった。語学はやはり大好きらしい。

 幼なじみは押しの強い人が多い。親にも好きなことをやりなさいと言われた。アメリカ人は主張が多いので彼女はついシャイになってしまうそうだ。
 ジェナさんと初めて会ったとき、やはりシャイな人だなと思った。國貞くんも静かに語りかける人だが、彼女はささやくように話す。彼女は優しく繊細でしかし芯が強く、なにか日本的な風情を漂わせていた。彼女が日本を好きだと言うのは彼女の本質に響く理由があるように思えた。だから彼女が彼と出会ったのは単なる偶然ではない。二人とも直感で動くから運命に導かれたのだろう。
 

※大学において学士課程の学生への学習助言や教授の補佐を行う者


制作

 作品製作は大変難しいものだった。しかし今回は最初から二人で同じ額に入ったイメージが浮かんでいて切り離す理由が見つからなかった。結局淡い濃淡で表すほうがいいと感じた。さまざまな紙の中で和紙がもっとも合っていた。國貞くんが洋水彩紙でジェナさんが和紙というのは、偶然とはいえおもしろい。出来上がりはなにか國貞くんがアメリカ人に見え、ジェナさんが日本人にも見える。実際に國貞くんからはアメリカが透けて見え、ジェナさんからは日本が透けて見える。作品は若くて初々しい夫婦にふさわしいものにしたかった。それは偶然異国で出会った二人の未来を応援するような作品にしたかった。額も今までにない色味とスリムさでまとめた。

  作品は額装の外形が790mm×560mm奥行き30mmである。


 2012年9月9日