かっこいいヤツ

2009 1月3日

本当は帰らない予定だったが、都合により急遽帰省した。ぼつぼつ年寄りどもが入院し、なんとも閑散な正月。妻も帰らないので俺には誰も気も使わず、そのへんのポチ扱いだ。ふう。

母は元気でいろいろ話を聞いた。なかでも祖父の話は少し今までと違った。何度も出て来たが祖父は筋金入りの共産党員で有名な男だった。今まではろくでもない話しか聞いていないので、ろくでもないジジイという印象しかなかった。しかし少し見方を変えて聞くと新鮮な答えが返って来た。

若い頃はいい男だった?

それは鼻筋の通った涼しい顔をしたええ男でね、おじさんにそっくりよ。俺はおじを知っているので、容易にその若かりし凛々しい顔立ちを想像出来た。不思議なことにそれだけで何もかもが生き生きとしてきた。その名をとどろかした共産党の論客。新聞社が事件のたびに意見をお伺いに来た。警察に拷問にあった話など。そしてもう一つは歌舞伎や能に長けた趣味のいい好事家の一面。子供たちが「授業よりもこちらの方が大事だから」と強引に学校を休まさせられて歌舞伎などに連れられていった話。一人で能を興じる声が、家中に朗々と響いていたことは俺も覚えている。骨董品や剥製、蔵書の数々。端正な顔立ちで、男臭い革命家の側面とインテリの側面。そりゃ女にもてただろう。

かっこいいヤツだったわけか。初めてそう思えた。