ケントリッジ

2009 10月7日

ウィリアム、ケントリッジのインタビューはおもしろかった。

自分は挫折の連続であると言う。まず大学で油絵が上手く出来なくて挫折した。次に俳優を目指したがこれも挫折。そして映画作りに挑んだが、プロデューサーに恵まれず自分でやり始めた、と言う。その挫折の連続が今の作品のスタイルになったと言う。なかなか共感できるところがある。それでドローイングを映像にするという形になったらしい。南アフリカはデュマスを生んだ国だ。お互い油彩のペインティングより、紙に水彩や木炭を使うところが興味深い。色彩のトーンも妙に似ている。お互い同じ民族問題を取り上げているが、気になるのは2人とも白人である点だ。

制作で面白いのが計画をしないというところだ。まず一枚のシーンがある。そして全く異なった一枚がある。そこの繋ぎ方が突拍子もない。コーヒーメーカーが掘削機になったり、猫がラッパや電話になる。それでいてテーマは明快で、伝えたいことははっきりとしている。無声映画やドイツ表現主義の影響も強い。絵画よりも映画から入った人だろう。社会性が強いところもそう。時間軸があるというのも社会性と関係している。自分と社会性と体質は共感するところがある。しかし現実のダイナミズムという部分が違うかな。まあそれぞれの特性でもあるから。表現の多様さが好みもわかれるところだろうけど、自分の裸体を描いて、老いや迷い肥満をあからさまに描くことは新鮮だ。

中年の恋愛。というタイトルの絵があった。