ゴリラ便

2005 1月

小さい頃、「俺たちの旅」というドラマが再放送でやっていて、社会のはざまで葛藤するさまと、青春の熱さをけっこう楽しんでみた記憶がある。(ちなみにこれの現代版が「29歳のクリスマス」。同じ脚本家だしね)そのなかで会社勤めのできない中村雅俊が自分たちで会社をおこす。それは「なんでもやる会社」といってゴミさらいからなにから、本当になんでもやる会社だったりして、笑ってドラマを観ていた。しかし20歳をこえて本当にそんな会社に関わるとは夢にも思わなかった。

きっかけは旅先だった。四国の田舎町で僕はその男、溝田さんに出会った。なんでも昔アジアからアフリカを旅して僕に似た男に会ったという。あとで聞くと南アでマラリアにかかって死んだという。まあそんなきっかけで、東京のバイト先を紹介された。そこが「ゴリラ便」だった。

社長の岡部さんがまた旅人で、旅先でこの商売を思いついたらしい。ゴリラの格好をして結婚式の二次会にプレゼントを持って表れ場を盛り上げたり、土人の格好をして誕生日プレゼント渡したりする仕事だ。ゴリラの格好は場合によって熊になったりダルマになったりする。まあこれだけじゃなく、掃除から、妙な浮気調査、馬券の買い出し、人生相談?、SM写真のモデルからなにからほんとうに「なんでもやる会社」だった。ほんとうに面白い連中が集まっていて、演劇から、音楽、ヒッピーから、あたまのいかれた奴までいろいろいた。

あれからはや十年以上たった。みんなてんでバラバラになったみたいで、消息もつかめない。この前社長に年賀状を出したら転居したみたいで返ってきた。ネットでゴリラ便を探したら代表の名前も変わっていて行方がわからない。

なにもかも夢のような感じになってしまった。