一対一

2012　9月18 日

少し前かな。ちょうど中国の話になった。

それが今やえらい感じだ。中国中が大暴れに見える。俺が出会った上海の上品なご夫人や蘇州の今を生きる若者、カナダから一時帰国している北京の青年の姿はもちろんどこにも見えない。中国はアメリカに似ているとアメリカ人が言っていた。寄せ集めの合衆国。あの熱い暴徒以外に同じ数またはそれ以上の醒めた人たちがいる。中国に行ったときに感じたのはまさに烏合の衆という印象だった。特に若い人は日本人と変わらない感性を持っている。文化大革命の時代の中国人の生の声を描いたワイルドスワンを読んだとき、ああ別に何人だろうが同じだなと思った。ただそれを表立っては言えない。それだけのことなんだ。

中国の話になったとき、中国とひとまとめに言うけど報道されない普通の人たちもたくさんいる、そう言った。国やなんかの前に個人がある。その個人を理解することが国家を越えてゆく。結果的に争いや戦争を否定する。

僕には神戸で知り合った日本生まれの中国人の友人がいる。五十代で家庭もあり実業家としても成功している。中国人であることを誇りに思っているのだろう、名字を日本名に変えたりしない。現代的な方なのでこういった話にも冷静に語ってくれるだろう。僕は中国人だから、とさらりと言えるアニキは素敵だなあといつも思う。

中国人だから好きになったり嫌いになったりしているわけじゃない。僕は日本人の千光士誠ではなく、裸の千光士誠だ。ああいったことにふりまわされず、人と接したい。