会いに行く

2017 10月14日

そうだ、おかんの墓参りに行こう。

僕は妻にそう言った。

いつも帰省したらおやじの墓参りは必ず行く。でも妻のおかあさんの墓参りはめったにいかないのは可哀想な気がした。おかんのお兄さんはもう寝たきりのようだし、妻の妹さんも一人で行くような子じゃない。知ってる範囲で他に行く人がいないじゃないか。だからそう言った。

御坊に行くのは大変だった。まあ自分の調査不足だったが、高速バスで高速のインターで降ろされそうになって、急遽見知らぬ駅まで行ったり戻ったりで大変だった。電車も一時間に一本だった。足の方は最近の訓練でマシになっていたので疲れもしなかった。坊さんに挨拶してお布施も渡し、お墓に行ってみると久しく人も来ていないようだった。そして古い苔や土のついた墓石を磨いたら気持ちもすっきりした。花も活けて線香も炊いたらずいぶん見栄えも変わった。おかんも喜んでるよ、と妻は言う。

帰りに「ありがとう」と言われた。

別に、ふつうのことだよ。義務じゃなくてほんとうに行きたかったし、と僕は言った。

その日は晴れていて海がきれいだった。