傘はない

2004-3月

そう言えばあの女はどうしたかな。結婚してると聞かされたのはずいぶん後になってからだ。別にどうでもよかったし付き合ってる女もいなかったので簡単に考えていた。家に誘ったときあっさりと来たことに妙にハラがたったことを憶えてる。

家にいったのは冬の寒い小雨まじりの昼だった。安っぽい2LDKのアパートだった。白い猫がいて、なにか彼女の臭いしかしない部屋だった。ブラピの「セブン」を観て女を抱いた。女は無邪気に喜んでた。

暖かいビーフシチューを出されたとき、女のだんなが外回りの仕事だったことを 思い出した。ガラス越しにのぞいた外の世界は寒々としていた。帰ろうとするとまだ帰って来ないからと言って止められた。

もう一度外を見ると、雨が少し勢いを増してガラスに粒子を叩き付けていた。