原田芳雄

2011 7月17日

原田芳雄。色気のある男、殺気のある男、雰囲気のある男。いろんな言い方があるだろうが、全身の毛穴という毛穴から人間を感じさせる役者だったことは間違いない。

原田は主役に対する鏡、毒の部分を持った立ち位置でいつもそこにいた。だから彼がそこにいるだけで映画の世界が生身のリアリティを放ち始める。特に印象に残っているのはツィゴイネルワイゼンだ。主役の藤田敏八に対する毒の部分を担っていた。奔放な野生で映画の中を自由に立ち回って、遊び笑い食らう。彼はいつだってひょいとそこに現れた。陽炎座、田園に死す、どついたるねん、そしてどこかの物語で。

ツィゴイネルワイゼンの中で彼はこの世とあの世をいつも行き来していた。鰻の肝を食らい、女の肝も食らい、酔いどれて無邪気に戯れながら。

原田芳雄は消えない。

俺たちの心に永遠に残っているだろうから。