妻のはなし

2008 11月14日

彼女に初めて出会ったとき、挑むような真っすぐなまなざしが強く印象に残った。彼女は昔、世の中に敵意を抱いていたように思う。守るものは妹と母親。ただそれでけ。しかしそれと同じくらい本当の自分を分かって欲しいという気持ちを強く持っていた。見た目には何不自由なく暮らして来た品のいい娘さんに見えるからだ。そんな彼女が俺という人間を発見した。

強い姿勢で生きている様とは裏腹に彼女には壊れやすい痛みや不安から来るなにかがあった。そういう風に考えるな!と何度も怒鳴った。泣いても俺は言い続けたし、どうしたらいいのか自分なりに悩んだ。それでも別れなかったのは、芯にあるものが本当に純粋だと思ったからだ。そして彼女も徐々に変わっていった。気がついたら五年も経っていた。

東京で会っているとき、随分向こうからでも彼女とわかることが何度かあった。周りの空気が違う気がした。微動だにしない凛とした空気が張ってるように感じたことが何度かある。

今は彼女も昔のような殺気はない。しかし昔にはない優しい表情がある。結婚してからも随分厳しい局面があった。なんとか乗り越えて今がある。優しい表情は簡単に出来たものではない。