帰省1

2010 2月12日

家の整理で急遽帰省した。

実は千光士本家の家は人が住まないまま7年くらい置いている。高知でも田舎の辺ぴな土地だ。高知市から電車で一時間。そこからバスで15分。バスは一日三便だ。いってた時間にバスはこなかった。朝の7時に安芸で立ち往生だ。バス停の時刻はあってるから、言ってた時間が違ってた。市役所に聞いたのにいいかげんなもんだ。まあいい。田舎なんてそんなもんだ。駅前の喫茶でコーヒーを一杯。夜はスナックでもやってそうなところ。しょうがないからタクシーでむかう。

家はここ2年近くほうってた。案の定、竹やぶは生えて雑草は生い茂り、巨大な木も生えてた。しかし不動産やに査定に来てもらうために、木を刈る必要がある。千光士家の長男としてやるべき仕事だ。やみくもにばっさばっさと刈り込んでゆく。あたりはとにかく静かだ。なにせまともなスーパーもコンビにもない。野鳥が木の枝にとまって鳴く。一仕事終えて母が握ってくれたおにぎりをほおばる。ぼんやりと過去のことが浮かぶ。幼い頃父親にこの縁側で遊んでもらった思いでなんかを。日差しはあの頃と変わらないはずだ。

若い親父たち夫婦は離れの四畳半で暮らした時期があった。今はそれも朽ちかけている。近くで親父が俺の無事な出産を祈願したお地蔵さんがあったことを思い出す。その場所に向かうと今も健在だった。きれいに掃除してあって今も皆の間で生きている。おもわず手を合わせた。母屋の中に入ると、床の間にひじいさんと爺さんの写真があった。盛作じいさんは軍服を着て颯爽としている。騎兵隊の優秀な士官だったらしく、高松の師団を率いていた猛者だったらしい。秋山好古の坂の上の雲の時代だろう。その話は後で聞いたが、なぜか写真を見たときに自分だ、と思った。その横に誰が置いたか知らないが、父の教員免許が額縁に収めてあった。よほどうれしかったんだろうし、誇りに思っていたんだろう。なぜだかじっと見入ってしまった。

変える間際に土を掘った。千光士代々の土地の土だ。

そしてそれをぎゅっと握り締めた。