廃盤

2008 12月20日

大島渚の「少年」という映画が無性に見たくなった。もう20年ほど前に観た。しかしDVDも廃盤だしレンタルもない。

彼は独立プロの時代が最も貧しく飢えていたと思う。後年のタレントのイメージじゃなく、社会運動のカリスマ的牽引者、同時代の青年の代弁者だった。それが学生運動の自滅とともに彼も決別する。その後は発表を世界的な活動にシフトし大作を連発、国内ではタレント活動も増える。そのことの功罪はあるだろう。貧しい時代の著作は言葉も違って聞こえる。実験的にラジカルに大手の配給に干渉されることなく、気心の知れた仲間たちととことんまで突き詰めながら映画が作れた喜びと苦しみは記念碑だろう。自分の思いも重ね合わせながらそう思う。しかしその時代の作品がほとんど廃盤というのは悲しい。一億で製作する時代に一千万で劇映画を作るのは大変だったろう。配給網は弱く、背中にフィルムを担いで日本中の地方の公民館やなにやらで上映したらしい。そんな時代の「少年」は珠玉の傑作だ。いろいろ探していたが、このたびとんでもないところから手に入れることが出来た。中国製作で大島渚全集が日本の業者経由で販売していた。製品はすべて本物。ただ全集は中国が勝手に作ったものだ。それをとんでもない安価で入手出来た。それはかなり複雑な心境だが、とにかくもう会えないと思っていた作品と再会することが出来た。そのことは素直にうれしかった。