技法

2018 5月22日

技法について何度もよく聞かれたんですが、木にアクリルで描いているというと驚かれます。キャンバスの網の目が見えるのが嫌ですし、ジェッソ塗ってツルツルにするのも嫌なんです。まあ結局ジェッソをクラックさせるヒビを入れて、独特の質感を出してから塗ってるんですが。木の重み硬さは残っていると思います。

油彩のコッテリした感じは肌の透明感と相反するので採用しませんでした。ダヴィンチの頃の薄塗りの重ね方はあまりにも時間がかかるし、リスクが高い。ちなみにモナリザには失敗した塗りがあります。下の層をずるっと引きずっているのが見えます。左目から鼻の間の影に一点明るい部分があるのですが、乾燥せず上に塗るとそうなります。

グラッシという薄塗りが限界があり、油彩の精度、粘度も上がったので、最初から厚塗りにして構築してゆくようになったのが油彩の歴史ですが、アングルのような神業を最後に、現在の油彩の技法は印象派の厚塗りの延長にあります。描いたことを主張する方法です。ある意味あれは安易に真似しやすいように見えますが、本当の印象派はもっと高度な技術です。

よく写真ですか?と聞かれましたが、写真以上に現実に迫りましたと答えました。僕には現代美術も洋画も今の時代には新鮮ではないと思います。あえて描いたことを主張することは、邪魔で仕方がない。絵画もただ本質に迫る方法でしかない。

ただ写真以上の何かを残したとは思っています。