探偵物語

2010 7月29日

松田優作のドラマの探偵物語は有名だが映画のほうはあまり評価されていない。

薬師丸ひろ子中心のアイドル映画ということがその要因だろうが、名匠根岸吉太郎監督だし優作である、なにもないわけない。お話自体は陳腐なもので万人におすすめできるものではないが、松田優作、おとなの男と若い女、その部分だけ見れば得るものもある。

まずギラギラした野獣から肩の力の抜けた大人の悲哀やペーソスを感じさせる優作の変貌に惹かれた。ばついちのさえない興信所の探偵。無邪気に事件を巻き起こす女子大生とのお話。優作は決してかっこいいおとなじゃない。さえないが人生の悲哀をみにつけている、悩みも悔いも通り越したあとの大人の静寂がそこにはあった。最初に観たのは16のころで、21のときにちょうど年下の女子大生といろいろあった俺はすぐにこの映画を思い出した。年下のひろ子は無邪気に騒動を巻き起こす。大人の世界への関心と少女期からの脱皮に揺れ動いている。優作は彼女が入ろうとする大人の世界の苦さを知り抜いている。失敗した結婚。生まれなかった子供。生活のための仕事・・・。裕福な資産家のお嬢さんとはまったく反対の世界。彼は彼女を子供として扱うが彼女は最後までそれに抗う。だから優作ははっきりとセックスをひろ子との間に持ち込まない。しかし彼女の強い思いが彼を動揺させる。最後の成田でのラブシーンはそんな二人の瞬間の接点であり現れて消えた花のようなものだ。

映画はここで終わるが、実際の優作は同じような年下の当時18の熊谷美由紀と不倫の上再婚している。そして離婚から二年後にこの映画の辻山を演じている。そう思ってこの映画を観ると、なにか深い物語を感じるかもしれない。もしかしたらこの映画は彼が生きれなかったもうひとつの人生かもしれない。そんな事情は当時知るよしもなかったが、深いリアリティのようなものを彼のしぐさ、言葉から強く感じていた。

21から俺も年齢を重ねた。年下の女性と出会う機会も増えた。ただのおっさんになって、あんな雰囲気を匂わせる大人にはなれなかった。

それでもときどきあの映画の優作を思い出す。