秋山好古

2009 12月11日

ついに「坂の上の雲」が始まった。放映の前に急いで小説を読んだので、追体験することになる。

とにかく秋山好古が好きになった。知性は深いくせいにそれを押し殺して軍人という生き方に準じた目的主義に徹している。食事も質素そのもの、虚飾を嫌う。生き方も出で立ちもだ。弟の真之が新聞を読んでいると「そんなもんは長じてから読め!」とひったくる。己の意見がないものが、他人の意見ばかり読むと害になるばかり、という信念らしい。身辺は単純明快でいい、というのが彼の哲学らしい。弟の下駄の鼻緒が切れて、手ぬぐいを裂いて直していると、「なにをぐずぐずしとる!裸足でゆけ!」となる。弟が新しい腰巻をもらったのを目にすると「歴とした男子は華美を排するのだ。縄でも巻いておけ!」と来る。思わず笑ってしまう痛快さがある。だいたい無駄口をたたかない。行為で示すのみだ。そして大きなところでは寛容で、かなめを踏みさえしなければ問題なかったらしい。この男は戦場でもここは死守すべき場所になればてこでも動かない。酒を食らって待つにことに徹していた。戦場で上司の批判もしない。与えられた情況でベストを尽くすのみだ。

戦後は要職をなげうって田舎で校長になった。戦争のことはほとんど語らなかったらしい。知的な側面としては、共産主義の胎動期にフランスで過ごしたため、社会主義国家に理解もあったらしい。まだソ連誕生の前だ。子供たちは尊敬する福沢諭吉の創設した慶応義塾にいれた。家が裕福なら彼は軍人にはなってなかっただろう。しかし彼の天分はまさに日本の歴史が必要とした。

秋山好古。最後の武士と言われた男だ。