純粋な生き方

2008 7月16日

純粋な奴を知っている。

予備校で出会ったある男だ。山形出身の元ヤンキーで田舎で度重なる暴力事件に関わったり、町の農家の車を崖から何台も落としたりする札付きのワルだった。そして人生変えるつもりですべてを断って上京して来ていた。彼と俺は徹底的に、遊び、議論し、泣き、怒った。肉親より仲が良くなった。くだらないことではしゃぎ大暴れし、生き方についても死ぬほど語った。話して二、三日経つなんてザラだった。今でも彼とのあの頃の思い出はキラキラと輝いている。作品も優れていた。大学当時から学んだ写真は、白と黒のコントラストの強い重厚なものだった。お互い競いあう最良の関係だと思った。拾って来た猫が死んだと言って、筋肉質の図体を小さくして涙をいつまでも流していたことがある。こいつは本当に純粋な魂を持った人間なんだな、と思った。味方と思ったら膨大な愛情を注ぎ込み、敵には容赦しない、そんな男だった。しかしこんな話が出たことがある。

「年をとればとるほど汚れていくじゃねえか?お前みたいな奴が生きてるのが俺にはわからねえよ」

「純粋は無知とは違うぞ」

今思えば、この会話はその後の2人の生き方を象徴していた。