絵が乾くまで

2008 10月15日

絵が乾くまで本を読んでる。

久しぶりに大岡昇平なんぞ読んだ。太平洋戦争時の餓えたレイテ島での極限の体験を書いてるが、視線は冷徹でストイックで詩を読んでいる気分だ。大学時代友人の中田に高橋三千綱を教わった。最近はろくでもない剣豪小説ばかり書いてるが、若いときの作品にはひどく共感した。主人公はぶっきらぼうな若者でひどい厳しい言葉を投げるが、根底は人間を愛している。そう思うとあの頃の思い出がよみがえって来た。

ある女性との同棲。友人との諍い。嫉妬。俺の稚拙な行動。なにもかも、だ。彼女はめったにいない素敵な女性だった。彼女は結婚をしたかった。年は3つ上。俺が二十歳からつきあった。だから俺も悩んだ。4年近くつき合ったけど、俺は結婚なんて誰ともしたくなかった。八王子の緑荘。よく行った茶店「馬天使」。教えてくれた洋楽の数々。彼女は多摩美の日本画を出て、大好きな犬の絵を描いてた。

とりあえず、絵が乾くまで思い出そうか。