胡蝶の夢

2009 10月7日

ちょっと前大阪で「ルーブル展」行きました。まあ、あんなもんか。昔本場で観たし。やなぎみわ、もどうってことないし。

そんで京都でウイリアム.ケントリッジ行ってきました。木炭を主体にしたドローイング。そしてそれを映像としてみせる術が優れている。この映像作品がなかなか魅力的だ。絵を現代的に見せる方法をいろいろ自分としても模索してるけれども、この人もいろんなアプローチで展開している。大好きなジョナサンボロフスキーをちょっと思いだした。作品の内容が現代的なシニカルさペーソス、ユーモアと暴力性やいろいろなものを連想させてゆく。政治的な意味も強い。これは好き嫌いが別れるところ。やっぱりドイツだなあ、などと思ってたら南アフリカだって!嘘だろ、おまえ。やられた。(笑)木炭ってのは俺の射程距離になかったけれど、ちょっといじってみるかな。凄く共通点もあったので満足して帰ってきました。

胡蝶の夢読みました。司馬の幕末ものもサムライの視点が多かったけれど、これは蘭学者、3人の医者の物語。江戸時代ってのは階級が厳密でずいぶん面倒で生きづらいところがある。医術はそうもいかない。結局技術が絶対で階級も社会も飛び越えてゆく。激動の時代に市井の視点で社会を見ることが出来て、歴史に厚みが出来た気がする。長崎、佐渡、江戸に徳島に大阪や京都と、舞台も様変わりする。伊之助という悪魔のような記憶力を持つ天才と、その師の人格者、松本良順。両順と同門の間寛斎。時代、人間性、才能や生き方に考えるところは多い。天才だが人間性の欠如した伊之助の終わり方、最後は官に仕えた良順。反対に虚飾を全部捨てて行った寛斎。寛斎は医者として徳島での成功を捨てて、73歳にしてなんと未開の北海道の開拓に身を投じる。まるでシュマリじゃないか!妻も開拓者になった夫に喜んでついて来たと言う。その妻に先立たれ廃人のようになっていたが、アイヌと放免囚人の救済、自作農の設定という努力目標に向けて奮い立たせたらしい。けれども現実は残酷で、彼の財産を剥奪するために子供に訴えられて83歳で自殺する。まあ最後は辛いけれども、人生ってのはいろんな生き方があると痛感する。

最高じゃないか。