見下ろした街

2005 1月

いろんな街に住んだ。父親が教師だったので、赴任先が変わると住む場所も変わった。高知の田舎をしばらく転々とした。落ち着いたのは家を建てることになってからだ。それが7歳くらいのとき。18までいたから思い出は多い。田んぼばかりある田園地帯だった。黄色い稲がまぶしかったのを今でも憶えている。空がやたら広く雲の移りゆく様がドラマチックだった。夜になると星が降るようなほどいっぱいになった。

東京に初めて住んだ町は立川の田舎だった。それから八王子、国立、拝島と多摩地区を転々としたが便宜上というか、仕方なく住んだだけだった。国立はちょっと違うが、あとは値段に折り合った家賃で決めただけだった。けど前から人生半ばが来たら住みたい町に居を落ち着けたいと思ってたから、今の神戸はほんとうに満足している。大体東京でも家族なんか持つと区内なんかに住めない。埼玉か千葉、よくてやっぱり多摩地区。神戸では一番いい場所で10万以下の家賃。まあ探したけど。

それで思ったのは最近街がなくなってきた気がする。郊外の田舎を開拓し、駅と巨大スーパーにマンション作れば街だと思ってる。脳が作った街。機能性だけ考えた街。その点歴史がある街は生物のリズムにそっている。まあ誰も住みたがるけど高いから住めないんだろうけど。神戸はいいアイデアだった。

今マンションの五階にいる。坂の上になるから街を見下ろせる。正月に高知に帰ったけどなんだかいっぱい家が建って田園が消えつつある。住んでる人から見ればただのノスタルジーなんだろうけど、やっぱりさびしい。神戸に戻ってほっとした。まだ半年しか住んでないのに。田舎では平屋だったからこんな高い場所に住むのは初めてだ。見下ろした街の灯は不思議なほど気持ちを落ち着かせる。