雨の日に

2005 3月21日

安藤の建築なんか思いながら雨の日に外をうろうろしていたら、若い頃のある体験を思い出した。

そのときは北海道にいた。9月の近い夏の日、降りしきる雨の中自転車で北海道を駆けていた。前年に四国まで走破して自信を持ったのか、次の都市は東京から北の地まで来たわけだ。丁度その頃はひどい豪雨が続き、果てしない草原の中にまっすぐに続くハイウェイをひたすら走っていた。なぜそんなことをしたかったかというと、なにも考えることなく肉体を酷使したいと思っていたからだ。しかも孤独に。そしてそれがひどく気持ちいいものだった。

考えることが多い十代だったし、人間関係が複雑な家に育ったのもある。一人旅の気ままで自由な関係は風通しもよくとても新鮮だった。ひどい雨の中、宿もない小さな街にたどり着き、知らない家の車庫に潜り込んで一夜を明かしたこともあった。見知らぬ人たちに食べ物ももらったり、子供たちとの不意の出会いもあったし、豪雨のなか大自然の脅威も感じた。「屋根とか壁ってすげえな!」単純にそんなことを強く思った。

次の年にバイクの事故で両足を骨折してなかなかそんな旅もできなくなったけれど、あのときの思い出は今も強く残っている。