旅のひと

2005 2月10日

バルセロナで宿を探していた。20代での旅の途中。

なるべく安い宿を探した。そして見つけたのは窓もない部屋。夏だから暑くて扉を開け放して寝た。買ってきた水はすぐに暖かくなった。

そんな宿で日本人のナカツカサという男と知り合った。背は小さいけどエネルギーに溢れ、人なつっこい笑顔が印象的だった。年は二つばかり上だった。いろんな仕事を世界中でやってきた、といった。確かに仕事はできそうだった。N.Yでドラッグのディーラーをやっていたという話を笑顔で話した。当時のN.Yで女とやりすぎてエイズかも、とまた笑う。そのあといろんなバックパッカーと五人部屋をシェアしてしばらく滞在した。毎日代わる代わる知らない男が空いてるベッドに寝てたりしていた。俺たちは昼間から安いワインをラッパ飲みしてハッパをキメながら笑った。おもしろいやっちゃな、と彼は言った。みんなで毎日大騒ぎして本当に楽しかった。最後にバルセロナの駅でみんなそれぞれの目的の場所に旅立った。それっきりナカツカサとも会っていない。

そして残ったのはあの笑顔だ。