桜井、それから

2011 10月22日

彼は日本的なウェットな感性がない、内省するとかもない。カラリとして開けっぴろげ、周りがどうだろうがマイペース。これはやっぱり、まちがってるよ!と詰め寄るかと思えば、これってほんとうにからだにいいから飲んでみてよ!と青汁を持って来たり、つまるところめちゃめちゃ正直な人間なんだ。桜井は相手の個人を尊重してるし、自分のフィールドを常に持っていた。仕事の帰りにいきなりこう言う。今日は駅まで一人で公園歩いて帰るからさ、悪いけど。別に機嫌悪いわけじゃない、本当にそういう気分らしい。俺もオッケー!じゃあ明日な!と言って帰る。そんな感じだった。俺はやっぱしさ、生まれた場所に戻ると思うんだよな。そういいながら遠い目をしてNYのことを思い出す彼に、日本は狭すぎたのかもしれない。8年前、発表しながら東京スタデオにまだいたけど、会ったのはそれが最後だった。

最近ネットで消息が分かった。今は名門テンプル大学日本校のアート学科で准教授らしい。へえ、と思い連絡すると「ああ、職場は多少変わったけど僕は相変わらずのままですよ」だって。(笑)変わってねえな。それより制作に時間が割けないのを嘆いていた。仕事は前の方が面白かったね、と言う。それでも彼の語学力と知性が生かせる状況になったと思う。俺のことも、どうしてんのかな?といつも思ってたらしい。HP拝見したよ、魂のこもった作品と精力的な活動を見れてホッとしたよ。そう言った。いろいろしゃべって、やっぱり俺たちの年代ががんばんないとな、と言う。変わってないな、昔を懐かしむような男じゃない。そういう話はとてもうれしかった。

桜井は最後にこう言った。「でも連絡しなくっても会えるときは会えると思ってたから」