海のうた

2008 7月5日

若い頃は叙情的な側面が強かった。詩情も強く、いくつか自分でも作った。どれもくだらないものばかりだった。今思い出すのは寺山修司の詩だ。「海について」という詩の中で十七歳から二十七歳までの章にわかれている。いくつか抜粋してみよう。

ある日、ぼくは海を、小さなフラスコに汲み取って来た。下宿屋の暗い畳に置かれたフラスコの海は、もう青くはなかった。そして、その従順な海とぼくとは、まるで密会でもするように一日中黙って見つめあっていた。

ぼくの失った言葉を

遠い町で

見知らぬ誰かが見出すのは

こんな夜だろう

海がしずかに火を焚いている