脱出

2013 9月30日

そんな流れで吉村昭の「漂流」を読んだ。

長平漂流の12年の苦闘の記録だ。四人の仲間と無人島に漂流し3人の仲間にも先立たれ1年半もたった一人でこの孤島で暮らした。島の食料はアホウドリと海藻と貝や魚のみ。真水はないので雨水をアホウドリの卵のからに備蓄する。アホウドリは季節により異動するので、いない時期は干物にして備蓄する。素晴らしいのはアホウドリが異動する事を察知し干物にして備蓄する計画性と洞察力だ。しかもアホウドリばかり食べると病気になるとわかると、海のものを食べ適度な運動を心がける。鳥の羽を利用して衣服を作り暖をとる。火はないから他に何も出来ない。国に妻子を置いて来たわけでもなく、ただ理由もなく生きるという一点のみにすべてが集約している。

その後漂流者は二度あり総勢14名にまでなったが12年一隻の船も通らない。意を決した彼らは自ら船を造り島を脱出しようとする。年に数度しかあがらない破材をつなぎ合わせて全長9メートルの船を建造する。船は作ったことはないが乗ってはいるので構造は知っている。しかも二度目の漂流者のおかげで大工道具と火まで手に入った。鉄を溶かすふいご、道路の建設、漆喰を用いため池まで作る。四年の歳月をかけて船は建造される。もちろん継ぎはぎだらけの船で荒波に襲われて海のもくずとなる可能性の方が高いし、どこに向かっていいかもわからない。それでも彼らは脱出する。

そして八日目に250キロ彼方に人間の住む島を発見する。