ああいう男

2011 12月3日

スローなブギにしてくれ。

そういやそんな映画と歌があった。前にも書いたけど、あの頃の古尾谷雅人にはとても憧れた。不器用で乱暴な言動やふるまい、正直な感情とはにかんだ笑顔、ヤケになって暴れる様。斜に構えた風情に隠れる繊細さと優しさ。「悪霊島」のヒッピーの役も好きだった。僕は当時中学生だったが、一目で直感した。自分はああいう青年になりたいしなるだろうと思った。「ヒポクラテスたち」も素敵だったな。ここでも繊細さと一瞬の野性が炸裂している。「丑三つの~」とかああいうのは好きじゃないんだな。あまりにも青年期のイメージが強かったが、「宇宙の法則」や「北の国から」のいい味のあるバイプレーヤーとして中年の演技も興味深かった。役者として一番印象に残ってるのがテレビドラマ「中原中也の汚れちまった悲しみに」だった。小林秀雄の役ははまっていた。繊細さと知性、そして秘めた野性。それは彼にふさわしい役だった。そして雪の夜の中也との絶交。中也に殴られて血を流し「もううんざりなんだよ!てめえとは絶交だ」と吠えたあの目がいまだに焼き付いている。その後のドラマは彼にふさわしいものは少なかったようだ。そしてああなりたいと思った像からは遠くなったように思う。それでも老けた彼の演技も見てみたかった。

松田優作は彼の兄貴分だが、マッチョな頃より抑え気味になった頃の方が親近感があった。どちらかというとああいう中年になりたいなと思った。まあどっちにもなれなくて自分は自分だったが。

二人ともとっととくたばって、ああなりたいってのがいなくなったな。