淵田美津雄

2010 12月7日

戦争は嫌いだが、物事が露になる。そういった意味で強い関心がある。歴史を知れば今がわかるし未来もわかる。他人を知れば自分もわかる。

日本人なので太平洋戦争と第二次世界大戦には強い関心があった。 ヒトラーとドイツ、日本の戦争に関しては自分なりに読んだり聞いたりしてきた。

南方の果てで仲間の人肉を食うか食わないかという極限の飢餓と戦い冷徹に観察する大岡昇平。落後兵として南方に送られ庶民の目線で運命を翻弄させられ片腕をなくした水木しげる。空襲の戦火の焼け野原の東京に残って現実を見極めようとした坂口安吾。後の世に残されているのは戦争を否定できた人たちの話ばかりだった。いずれもが戦争に大きく加担した意識がない自分に近い人たちだった。しかし最近そうじゃない人物の自伝を読んだ。真珠湾攻撃総隊長、淵田美津雄の自伝だ。

一言でいって彼は当時のあたりまえの考えを持った責任感がある優秀な人間だ。自分の国がやられるのに反戦をうたう余裕があるわけがない。やるならば的確に相手に打撃を与えなければならない。こういう本がそろそろ出るようになってきた。そんな当たり前のことを冷静に見つめるのに世の中はずいぶん時間がかかった。彼はハワイ奇襲作戦を自ら機上して陣頭指揮し、ミッドウェー海戦で重傷を負い、原爆投下の広島を奇跡的に偶然逃れ、被害調査に従事し一人だけ原爆症にかからず、厚木基地でマッカーサーを迎え降伏調印式に立ち会った 。そして戦後キリスト教に回心し仇敵アメリカへ伝道の旅に出る。とんでもない強運と激動の人生を生き抜いた男だ。

自分とは違う男だ。しかし彼の無念や背負った歴史の重みは簡単にかたずけられるものではない。

僕たちは反戦、平和と馬鹿みたいに叫ぶのを聞いては来た。愛国は右翼と簡潔に呼ばれたりもしてきた。もういいじゃないか。なにもかもまっさらに見さしてくれよ。

俺はふつうにものがみたいんだ。