この世の仕事

2010 5月14日

ああいったヒューマニズムを発揮する人たちは、やはり富を持っている人たちだということだ。蟹工船の小林多喜二は、元銀行員だった。借金の方に親に売られた酌婦に感情を抱いたことからスタートしたようだ。宮沢賢治の親も質屋。坂本龍馬の親も金貸しみたいだったし、ゲバラも医者だ。つまり客観視できる状況ということだろう。

そこに断層みたいなものがある。

たいていの人はそのまま権力者として育つけど、感受性が鋭いから見過ごせないんだろう。あるいは驚きがある、か。半端な芸能人がアフリカにボランティアに行くのとは違う。あれは上から恵んであげてるだけ、もしくは宣伝に利用しているが、彼らは自ら入り込んでゆく。虐げられてる人は気がつかないし、気がついてもつらいだけだろう。体制を覆すには勇気も憤りもいる。ただの知性があるだけ、富を持っているだけでは小利口に生きるだけだろう。自分を捨てる覚悟もいるし、正気では無理かもしれない。そういう意味では馬鹿だ。

しかし人には生きる役割がある。この世でやるべき仕事がある。

アトリエの床を塗りながら、そんなふうに思うこのごろだ。