お兄さん

2009 5月6日

あの人はいつもラジカセのスピーカーから語りかけて来た。

中央線界隈をうろついて、目にするもの、目に見えるすべてのものを歌にした。原発も総理大臣も隣の石井さんと同じさ。上も下もない。俺たち「よそ者」の気持ちをよくわかってくれた。自信がなくなりそうなとき、偉そうな連中に罵倒されそうなとき、こう言ってくれた。

「頭ごなしに笑われてもうぬぼれて踊ってりゃいいのさ。とつぜんの贈り物を受けとるときがきっとくるさ」

だから偉い人には容赦なく叫んだ。自由に歌わせろ、と。あたりまえのことが言いたいんだ、ふだんしゃべってることが歌いたいんだ、と。それを歌ったとき、歌うことが禁じられたり自由を奪われたときにあの人は本当に怒った。世間はそれを反骨とか過激とかぬかすだろう。それは違う。ただ自然に、自由でいたかっただけだ。

子供の目線でいつも世の中を見ていた。俺たちがちょっとでも偉そうになったら、少しはにかみながらさびしそうな表情を浮かべるだろう。そんな人だった。

さよならデイドリームビリーバー。俺はいろんなものをあなたからもらったよ!ありがとう!ありがとう!