そして

2008 7月18日

同じ音楽を聴いて同じ映画を観て同じ作品を観て同じ飯を食べ、すべてをともにした。巨大な基地跡に不法侵入して写真を撮ったり逃げ回ったりした。もう一度少年の時代に帰ったようだった。俺はあれほど一人の人間に深く長い時間関わったことは後にも先にもない。奴は俺のことをこの世に二人といない同じような人間だと思っていたのだろう。彼は写真と言う武器をひっさげて評価を上げ、武蔵美の補欠から短大、四年制への編入、大学の助手になっていった。二人の濃密な関係が出会ってから7年ほど続いた。それは青春時代の風景を決定づけた。

そんなあいつと別れる日が来るとは夢にも思わなかった。予兆があったが終わりは突然来た。何もかも捨てて旅に出ると言う。大学もやめるし、写真も捨てると言った。彼女もついて来ないと言う。馬鹿なことを言うな!と言った。俺は攻めた。胸ぐらをつかんだし、涙も出た。理屈は支離滅裂なものだった。しかし彼は「お前には、お前には絶対に分かるはずだ!」と叫んでいた。俺にはまったくわからなかった。今思えばお前にだけは分かってほしい、という意味だったんだろう。

それからあいつは突然失踪した。彼女とは別の女性と一緒に。