妖精

2008 7月8日

北海道を自転車で旅している時、東京にいる彼女に会いたくなったのか、やりたくなったのかは忘れたが、無性に帰りたくなった。

札幌のいた時所持金が一万を切ってたこともある。旅人たちとミーティングをした。ヒッチハイクでこのまま行くか、小樽で新潟まで船に乗りヒッチハイクするか。結局そのままとにかく列車に乗ることにした。切符は入場券の120円を買っただけだ。自転車は自転車屋で解体し、ヒモでぐるぐる巻きにして乗せた。東京までキセル(ただ乗り)することにした。便所に隠れたり、車掌がいる両を駅で降りて後ろの両に戻ったり、大変だった。おっさんに興味深そうに話しかけられたことを今でも覚えている。段々どれも面倒になってビールをカッくらって爆睡した。盛岡駅に着いた。ここで外に逃げようと思ったが、かなり厳重に出来ていた。まいったなあ、と思ってぼんやりとしていたらしばらくして、「北海道から?」と女性が話しかけて来た。その若い女性は何の説明もしていないのに、なにもかもわかっているかのようにこう言った。「夜に出る夜行だと切符見ないよ」一瞬あの世から誰かが見てるんじゃないか、と錯覚したくらいだ。彼女も北海道からの旅の途中で、名古屋まで帰るらしい。まるで妖精だな、なんて思った。

二人で酒を酌み交わしながら夜行列車に揺られた。