2高野山

2007 11月16日

奥の院は約二十万体の墓がある霊安所だ。もともとは空海が没した場だが、さまざまな歴史上の人物の墓もある。信長に光秀、光成に秀吉、浅野内匠頭から信玄に上杉謙信まで、まあすごい。これが樹齢何年になるかわからない吉野杉に囲まれて鎮座している。空海の本道までは片道四十分の道のりだ。朝と言っても真っ暗でなおかつ墓の前を薄暗い燈籠の火をたよりに進む。いつまでも続く石の道を見ていると現実かどうか分からない不思議な感覚がある。そしてようやく奥の院、本堂につくと尼さんが一心不乱に祈っていた。

朝食と夕食は毎日出されるらしい。というのは空海は死んでいないことになっているのだ。重厚で蝋燭の灯りにぼんやりと浮かぶ本堂の真ん中の結界の中で僧侶が読経を唱え始める。加えて脇から三人の僧侶が続く。我々は後方の赤い絨毯に座って静かに見守っている。余計なことが浮かぶが次第にその光景に集中してゆく。頭がピンと張りつめているのがわかる。次第に朝の陽が奥にある空海の御膳を照らし始める。神経が静かに集中する。もっと深く入り込みたいと思ったときに、ユースの朝食の時間が、、と言われて我に返った。