旅からはじまる

2006 7月6日

四月のこと。作品が二枚出来たところで行き詰まって、なにもかも自信もなくなり、自分がなんだかも分からなくなり、本当にヤバくなって四国に帰った。精神的なことで病院なんか絶対に行くか。薬漬けになるだけ。ソープに行く方がまし。まあそんなことで帰った。そして少し寺でもまわりながら歩くか、と思った。実家に帰ってもなにか違う気がしたのだ。

生きているといろいろな情報が入る。これをやると将来病気になるとか、ホームレスになるからとか、今を犠牲にする情報が多すぎる。恐怖で人を縛って奴隷化してゆく。あるときもう俺は一切考えないし考えたくない、そう思ってひたすら一日中歩くというのもいいアイデアだと思った。厳しい高知の自然のなかでくたくたに疲れてなにも考えず眠る。ちょっと前に膝の怪我で入院してその後は中性脂肪のことでもいろいろ医者にいわれ生活が神経質で臆病になってなんだかバカバカしくなった。

試しに港町を毎日歩いてたら日に焼けた漁村の人たちの真っ黒な表情が目に入った。UVケア?なんだそりゃバカバカしい。ここの人たちが何千年もそんなもんやって来たとは思えない。人間そんなにやわじゃないだろ。ビビらして餌付けしてるだけだ。そう思って堤防を歩きながらビールをあおる。

ギラギラした高知の太陽がくだらない思いを焼き尽くしてゆくようだった。