じいさんは熱い

2005 2月10日

昔祖父が古本屋をやっていたので、古本屋に行くとなにか落ち着く。あの古い本の匂いにはえも言えぬものがある。それに本が大量に並んでると気分が満ちてくる。本にはフェティッシュな愛情を受け止める存在感がある。で、今の自分の家にはやはりズラリと本が並ぶことになった。

祖父は主にコミュニズム関係の本を大学の学生に売っていた。当時はそのテの本を置いている貴重な本屋だったらしい。晩年には新聞にも出ていた。

しかしこのじいさん、よく客に向けてどなりちらしていた。もう大学も移動して本が売れず、普通の本も置くようになってからだけど。客がパラパラと本を読んでいると「そんな本の読み方があるか!」といきなり怒鳴っていた。客は「こんな店二度と来るか!」といって出て行ったりしていた。自分はまだ小学生くらいだったが、ほんとうにビビった。だいたい「いい能の出し物」があると、うちの母など学校を休まされて連れて行かれたらしい。教師には「学校より大事だから」と休ませていた。だからそんくらいは普通かもしれない。おかげで本はさっぱり売れなかった。今の世の中では考えられないような話だ。

こうして思い出になると面白いが、まわりは大変だったみたいだ。豪快に飲みまくり、人が吹っ飛び皿がビュンビュン飛んだらしい。今はなき土佐のいごっそうだ。

じいさんが亡くなってしばらく時間も経った。