紙様

2002-2月

あいつは

ほんとうに仲のいい友人だったし、なんでもしゃべり合う仲だった。毎日話していたし話しだすと2日くらいすぐに経った。ほんとうにウマがあってたのもあるし、やっぱり同じように芸術の世界で表現する戦友のようなとこも強かった。そんな彼が突然様子がおかしくなったあの夜のことはいまだに忘れてはいない。

神を探す旅に出ると言った。愛を探す旅だとも言った。

なにを言ってるのかわからなかった。そんなものは選挙のスローガンだと思っていたし、自分のなかの身近な神はやっぱりペイパーの紙だったりした。

「おまえならわかるはずだ!」と言った。その気持ちは胸に響いた。しかしそれゆえに本気で腹が立ったし、なんとかしないとと思った。最終的に言葉ではこっちが勝るのはお互いにわかっていた。

しばらくして突然姿を消した。それはショックだったし、知らない女性といなくなっていたことも驚いた。

それから何年も住所もなにも書いていないハガキが、沖縄や北海道からいろんなところから突然届くだけだった。

いなくなって10年以上経っていた。久しぶりに再会した彼には家族が出来ていた。二人の子供と奥さん。

「友達を紹介してくれたのはあなたが初めて」彼女がそう言ったとき、なにか胸の奥が つぶされるような気がしていた。