このサイトについて
画家。人を描くことを主体に活動している。インスタレーションなどのダイナミックな展示から小品まで幅広い展示方法が特徴。主にシンプルな素材で力強い作風で描き上げる。近年では様々な手法で新しい表現に挑戦を行なっている。
人と対峙して描く「1×1プロジェクト」を中心に活動。ギャラリー21+葉 ギャラリイK ギャラリー16 gallery wks.など多数で個展。神戸などを中心にライブペイント活動も行う。
2010 3月18日
生きていると面倒な考えがまとわりつく。世間はこうだから、この年齢になったらどうだ、なんだかんだ。転ばぬ先の杖にこうだ、この食べ物はこういう栄養だ、そんなことばかり。
目には見えないそんなものに翻弄されていると、自分を見失うことばかりだ。なにも考えない。無心になってひとつのことに集中する。それが最も難しいことだ。自分だってそうだ。迷いながら、よそ見しながら、ほんのときどき集中する。無心になれるひとの栄養をもらって。たけしが主演の「点と線」も気持ちを集中するさいの栄養の一つだ。
主人公は定年まじかの刑事だ。戦争の悲惨な体験をかいくぐり、生きてきた男。刑事は犯人を追うことに徹する。事件は心中に見せかけた偽装殺人。被害者は権力の口封じに殺された弱い立場の人間たちだ。刑事はなにもかもの垣根を越えてひたむきに犯人を追う。家族も省みない。仕事の管轄さえ超える。寝る間も惜しんで権力の罠を暴きつつ、かかわった人間たちの本質に迫ってゆく。殺した人間もまた、権力の犠牲になっているあわれな人間だった。寡黙で事件のことしか考えない。警察の中の権力さえくみしない。無欲な仕事一筋の男。家では黙って酒をあおる。こんな父親を僕たちはずいぶん昔に見たはずだ。彼は死んでいったものたちの思いを何度か代弁する。
生きたい、生きたい。そういうてるように思います。
そして戦争時代の死んでいった仲間たちの思いも語られる。
殺されたくもない。殺したくもない。生きたい、生きたい。
そんな言葉を聞いていると、自分も死を隣に感じたときの思いが重なってくる。
生きたい、生きたい。一秒でも長く生きたい。どんな状態でも少しでも長く生きていたい。あのとき確かにそう思った。
今はそれが少し変わった。
描きたい、描きたい。人間の存在を丸ごととらえるような作品を作りたい。そう考えるときに、武の演じた鳥飼のあのまなざしを思い出している。
一覧へ戻る