リアリティ

2013 6月18日

家の用事と仕事も兼ねて少し帰った。

いろいろ人に会った。それはおもしろいことで、自分にとって喜びでもある。シビアなやりとりもふくめて面白い。

旅の途中で今話題の小説、「永遠のゼロ」を読んだ。零戦のパイロットの話を軸に戦時中と今の日本の問題を暴きつつ、主人公の特攻隊に散った男の人生をひも解いてゆく。零戦の話が新鮮でとても面白かった。大まかな筋は予想もつくし、主人公があまりに清廉潔白な男なのでリアリティを感じなかった。これは山崎豊子の小説もそうだし、森村誠一とか社会派の作家でもそうだ。司馬遼太郎が素晴らしいのは主人公がリアルなんだな。ただの聖人ではない。実際の人物でも歴史物は大抵リアリティがない。完全なフィクションなのに三島由紀夫の小説の主人公の方がリアルだったりする。 まあいい。とにかく零戦に絡めた当時のリアルな話が圧倒的に充実していた。それでも面白さは十分あるし伝えたいことも明快だった。映画化されるらしいがそうなると感傷的な部分が目立つんじゃないかな。ここで語られている日本の構造的問題はおおむね賛同するけど、当時に比べ今の人間は道徳がなくなったという類いの話は好きじゃない。今の人間も状況が変われば道徳的にもなったりするからだ。しかしこの本の内容を損ねるものではない。