横尾

2008 7月12日

横尾忠則展観た。この規模は池袋で20年前に観て以来だ。

彼はデザイナー時代が長過ぎて、実物より印刷物にして見た方がいい場合が多い。画家宣言以降の油彩という手法にも不満がある。彼の作風は、イメージを現実化する作業だから邪魔なマチエールがない方がいい。あの油彩の手法はイメージを曖昧にするのでしっくりこない。自然にタッチを殺す塗り方になってゆく。そう言う意味ではシルクとかCGとか、タッチが全くない方法が彼には最も適したスタイルだと思う。しかし池袋のときより塗りはやや重層的で、味にはなっていた。まあそういう弱点は抜きにして、作品はおもしろいものだった。

彼は制限とか全くない人だから、なんでもイメージの中にぶち込む。美的な構成とか記号とかまったく気にしない希有な人物だ。あれは一見やれそうでやれない。猥雑で下品で無礼ななにかが押し寄せてくる。だからこちらも全く余計な垣根を取っ払って観るしかない。次第にタイトルすら見るのが邪魔に思えてやめた。とにかくイメージに集中した。うれしいのが最新作が一番おもしろいと感じたことだ。なにか新しいことが起こっている!

だいたいあの横尾の目は、瞳孔が開きっぱなしのようで恐ろしい。幼児の目だ。あれは全てを見ている。普通すべてを見ると気が狂う。あの声もそうだ。あれはなにものにもとらわれてない人間の声だと思う。