死の物語

2015 2月6日

若い頃の死は遠かった。

ドラマでも映画でも小説でもかっこいい死は憧れた。だから死をドラマチックなイメージでとらえていた。だから無茶も出来た。バイクでひん死の重傷でも死ぬなんて一切思わなかった。

死はいつも物語の中だった。しかし現実の死はあっけない。父も死に、叔父も叔母も従兄弟も死に、義理の姉も義理の母も死んだ。ドラマのような物語も言葉も一切残さずに。

いつのまにかかっこいい死は遠ざかり、静かに現実の死が近づく。それはあっけなく静かになんの物語もなく。

だから今、若い頃に見た映画の死の場面に憧れを見いだせない。生きたい。くたばりたくない。かっこいい死なんてごめんだ。

おれは最後までもがき続けて生きるだろう。