2006 3月21日

絵画の世界を見ていると、「私」という存在がどのように時代ごとに変遷してきたがわかる。古代の絵画は集団で一つの意識になっているようで、複数の人間が同じような表情で一枚の絵の中にいる。明確に変わったのはルネッサンスの時期で、モナリザとかが象徴的だ。たった一人の人物が何かの意志でこちらを向いている。風景は遥か遠くにあって。キリストという一人の人間から出発した西洋社会の一つの到達点がそこにある。

日本絵画も興味深い 。基本的に日本絵画は近代絵画まで「私」という存在が複数の人物によってなりたっている。一人で描かれるのは権力者に限られている。浮世絵などには風景の一部としての人間がいる。風景が遥か遠くになっているモナリザとは対照的だ。ここに「私」という個人が強く集団の中の一部である日本人観が見える。アニミズムなどの宗教意識の違いも強く風景の取り扱い方に反映している。

そして現代絵画にこのような 人間の集団がほとんど描かれなくなったのは「私」という存在が大きく変わったことを意味している。