船乗り

2013 9月30日

万次郎を救った当時、大西洋の鯨は取り尽くされていた。

しかし彼らは太平洋に無数の抹香鯨を日本近海に発見した。そして明治期までに米、英、露に取り尽くされた。鯨油は灯油、工業用に用いられ、蝋燭、軟膏、石けん、など高値で取引され莫大な利益をもたらした。肉は食べるものとされず捨てられた。捕鯨船は3年以上も鯨を探す旅が続く。鯨をしとめるには母艦から小型船を出し、オールで漕ぎながら鯨に並走する。鯨が息をするために海面に上がった瞬間に爆薬入りの銛を脳の上に垂直に射つ。もう一度上がったときにとどめを刺す。しかし全長27メートルもある鯨は獰猛で尾びれで船が木っ端みじんになって死亡する事も多い。命がけだが巨万が稼げるハンターの仕事だ。

万次郎が乗った捕鯨船は全長54メートル。幅11メートルで大砲も備えている。1841年当時としても大型の捕鯨船だ。船内には豚や牛まで飼育され、鯨油の大樽が六千個も積み上げられている。乗組員は34名。船長はウイリアム、ホイットフィールド。34歳。清教徒の子孫で厳格な道徳規律を身につけた人物だ。荒くれ者どもを束ねる男の中の男だ。

海と言う大きな自然を相手にしていると、人間は潔くなるんじゃないのかと思う。竜馬も船乗りだった。

海は人を強くさせる。